演劇を成立させる最低条件ともいえる演劇の三要素には諸説ありますが、最も有力なのは
①俳優・観客・劇場
②俳優・観客・戯曲
の2説です。
つまり演劇行為が成立する為には、観客と俳優は絶対条件といえますが、劇場と戯曲については議論が分かれる感じなんですね。
両論を尊重し【俳優・戯曲・観客・劇場】全て合わせて四要素こそが演劇の成立要件とされる場合もあります。
演劇の最小単位が何なのか、という問いに対する絶対的正解はおそらくないのでしょうが、収益を得ること前提の商業演劇においては、これら4つの要素が欠かせないものであることは確かです。
以下で演劇の三要素(四要素)それぞれの特色を簡単に解説していきますので、これから演劇に関わる人は予習として、すでに演劇業界に身を置く人は復習として参考にして頂き、演劇に対する理解を深めて頂ければ幸いです。
俳優は演劇の中核を成す存在であり、物語のキャラクターやメッセージを具現化する役割を担います。台本をもとに自らの体や声を用いて登場人物を生き生きと表現し、観客に感情や情景を伝える重要なメディエーター(仲介者)です。戯曲がどれほど素晴らしくても、それを魅力的に伝える能力を持つ俳優が不在であれば、物語の真髄は観客に届きにくいものです。
また、俳優の熱意や存在感は観客の反応や感情を大きく左右します。俳優の演技やキャラクターの解釈は、演劇の品質や受け取り方を大きく変える要因となる以上、演劇には欠かせない要素といえるでしょう。
観客・・・つまり鑑賞者がいなくても演劇は成立するかのように思えますが、少なくとも現代演劇において観客は単なる鑑賞者ではありません。観客の「反応の波動」が舞台上に影響を及ぼす影響は絶大です。公演中に観客の反応を見て、脚本の内容を変えるなんてことも当たり前に行われており、明確に劇の内容を左右します。つまり観客は演劇創造に参加する創作者でもある以上、演劇には絶対的に必要な要素となっています。
劇場は演劇を上演する場所としての物理的な空間だけではなく、演劇の雰囲気や体験を形成する要素としての役割も持っています。美しい舞台装置、効果的な照明、音響など、劇場の設備や環境は観客の体験を豊かにし、物語の世界に没入させる力があります。また、劇場のロケーションや建築様式も、観客が感じる文化や歴史の背景を形成しますね。
ただ「演戯」という行為自体は、土手でも、公演でも、空地でも、河原でも、極論いってしまえば、「どこでも出来る」ため、劇場が三要素に含まれない場合もあるのです。
戯曲は演劇の基盤となる台本のことであり、舞台に骨格を与える役割を果たします。それはキャラクターのセリフや行動、物語の構造やテーマ、コンフリクトや解決策を示す指南役です。戯曲は観客に物語の核心を伝えるための基本的な道具となります。良い戯曲は深い感情や普遍的なテーマを探求し、観客を考えさせ、感じさせることができます。
ただし、戯曲が三要素に含まれない場合もあるのは、即興劇のように事前に定められた台本なしで演技が行われるタイプの演劇もあるからです。
即興劇は、俳優の瞬時の反応や創造性に依存しており、固定された戯曲は存在しない分、誰も予想できないような斬新な台詞や展開が見られます。こういったジャンルが確立されている以上、戯曲を絶対条件ではないとする見方も当然あるわけですね。
演劇は多くの要素から成り立っており、それぞれが独自の重要性を持っています。俳優は物語を伝える中核、観客は反応とフィードバックを提供する共同創作者、劇場は演劇の体験を補完する場所、戯曲は物語の基盤としての役割を果たします。これらの要素が互いに連携し、相互に影響を与え合うことで、私たちに感動的な演劇体験を提供してくれるのです。