「演劇」と一口に言っても、実に様々な種類の演劇があることをご存じでしょうか？

 

そして同じく「演劇の種類」と一口にいっても、分類方法によって、色々な分け方があります。

 

ここでは特に

 

• 物語内容に基づく演劇の分類
• 演出手法に基づく演劇の分類
• 日本特有の演劇の分類

 

と３つの分類に基づく、演劇の種類を紹介します。

 

 

物語内容に基づく演劇の分類

悲劇

悲劇は、登場人物が困難や運命の試練に直面し、しばしば悲しい結末を迎える演劇の形式です。このジャンルは観客に深い感動や共感を提供し、人間の存在や運命の不可避性について考えさせます。登場人物は高い志を持ちながらも、運命や社会の制約により失敗に導かれることが多いです。シェークスピアの「ハムレット」やソフクレスの「オイディプス王」など、悲劇は古代ギリシャ時代から続いており、多くの文化に影響を与えています。

 

喜劇

喜劇は、ユーモラスな状況や魅力的なキャラクターを通じて、観客に笑いと楽しさを提供する演劇のジャンルです。喜劇は日常生活の矛盾や人間の欠点を風刺し、観客に新しい視点を提供します。喜劇の特徴はユーモラスな対話、オーバーアクション、そして幸せな結末で、観客を楽しませることが目的です。著名な喜劇作家には、モリエールやシェークスピアがいます。

 

不条理劇

不条理劇は、非合理的な状況や登場人物が特徴で、観客に人間存在の不条理や無意味さを考えさせる演劇の形式です。このジャンルは通常、不条理な状況や意味不明な対話を通じて、人間の存在の根本的な問題を探求します。サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」やユージン・イヨネスコの「禿げた女の歌」など、不条理劇は観客に現実世界の非合理性を考察させます。

 

演出手法に基づく演劇の分類

音楽劇

音楽劇は音楽、歌、ダンスを通じて物語を展開する演劇の一形式であり、観客に感動的な物語と美しいメロディを提供します。音楽劇は演技、歌、ダンスの三つを融合させて物語を描き出し、観客に豊かな感動と楽しみを提供します。音楽劇の代表例としては、「レ・ミゼラブル」や「キャッツ」、「ファントム・オブ・オペラ」などがあり、ブロードウェイやウェストエンドで大変人気があります。

 

オペラ

オペラは歌と音楽を中心に物語を展開する壮大な演劇形式で、豪華な衣装や美しい舞台装置、そして感動的なアリア（独唱曲）が特徴です。オペラは感情豊かな歌声と壮大なオーケストラによる演奏を通じて、観客に深い感動と美しい音楽の体験を提供します。著名なオペラ作曲家にはヴェルディやプッチーニ、モーツァルトなどがいます。

 

オペレッタ

オペレッタはオペラよりも軽快で親しみやすい音楽劇の形式で、ユーモラスな物語とキャッチーなメロディが特徴です。オペレッタは台詞と歌を交互に使用し、観客に楽しい時間を提供します。ヨハン・シュトラウス二世の「こうもり」やフランツ・レハールの「喜歌劇」などが代表的なオペレッタ作品です。

 

ミュージカル

ミュージカルは歌やダンス、演技を通じて物語を展開するポップでエネルギッシュな音楽劇の形式です。ミュージカルは観客に楽しさと感動を提供し、多くの場合、耳に残るメロディや華やかなダンスナンバーが特徴です。ブロードウェイの「ウエストサイド物語」や「ライオンキング」など、ミュージカルは世界中で人気があります。

 

人形劇

人形劇は人形を使って物語を表現する演劇の形式で、観客に幻想的な世界を提供します。人形劇は、人形使いの技術と表現力が重要であり、人形を通じて物語やキャラクターを生き生きと描き出します。日本の文楽やチェコのマリオネット劇、そしてインドネシアの影絵劇など、人形劇は世界中で多くの異なる形式があります。

 

日本特有の演劇の分類

伝統芸能

能

能は日本最古の演劇形式で、神秘的な舞と独特な音楽が特徴です。能はシンプルながら深い象徴性を持ち、歌、舞、音楽、そして詩的な言葉を通じて観客に深い思索を促します。能の演目は古典的なテーマを扱い、精緻なマスクと衣装、そしてゆったりとした動きが特徴的です。

 

狂言

狂言はユーモラスな短い演劇で、日常生活の出来事や人間関係を描写します。狂言は観客に笑いを提供し、人間の欠点や社会の矛盾を風刺的に描き出します。狂言の演出はシンプルで、登場人物の動きや表情、そしてユーモラスな対話が重要です。

 

文楽

文楽は人形劇の一形式で、緻密な人形操作と美しい音楽が特徴です。文楽は人形使いの技術と表現力が重要で、人形を通じて感動的な物語を描き出します。文楽は日本の古典的なテーマを扱い、観客に心温まる体験を提供します。

 

歌舞伎

歌舞伎は華やかな衣装とメイク、壮大な舞台装置が特徴の日本独自の演劇形式です。歌舞伎は派手な演出と感動的な物語を通じて、観客に楽しさと感動を提供します。歌舞伎は歌、舞、そして演技を融合させ、観客に日本の古典的な美を体験させます。

 

落語

落語は一人で多くのキャラクターを演じる語り芸です。落語はシンプルな舞台装置と豊かな言葉の表現力で観客を魅了し、ユーモラスな物語や人間関係を描き出します。落語は観客に笑いと思索を提供し、日常生活の風刺を通じて人間の欠点や社会の矛盾を描き出します。

 

近現代演劇

新派劇

新派劇は近代化された日本の演劇で、現代のテーマや問題を扱います。新派劇は日本の演劇の伝統を尊重しつつも、現代の問題を率直に描き出し、観客に新しい視点を提供します。新派劇は日本の社会変化を反映し、観客に感動や思索を提供します。

 

浅草オペラ

浅草オペラは洋風の音楽と演劇を融合した独自の演劇形式です。浅草オペラは華やかな衣装や派手な演出、そしてキャッチーなメロディで観客を魅了し、日本の演劇界に新しい風をもたらしました。浅草オペラはエネルギッシュな演技と音楽で観客に楽しさと感動を提供します。

 

大衆演劇

大衆演劇は庶民的なテーマと親しみやすい演出が特徴で、多くの人々に親しまれています。大衆演劇は観客に感動と笑いを提供し、日常生活の問題や人間関係を描き出します。大衆演劇は観客とのつながりを大切にし、観客の心に響く物語を描き出します。

 

演じ手による分類

商業演劇

商業演劇はプロの演劇団体が制作・公演する演劇で、質の高い演技と洗練されたプロダクションが特徴です。商業演劇は広範な観客にアピールし、エンターテイメントとしての価値を重視します。資金調達やマーケティング、プロモーションも重要な要素となり、舞台装置や照明、衣装などのプロダクションも洗練されています。ブロードウェイやウエストエンドのような演劇の中心地では、商業演劇は大きな観客を集めています。

 

小劇場演劇

小劇場演劇は小さな劇場で公演される、実験的で創造的な演劇です。小劇場演劇は新しい表現方法やテーマを探求し、従来の演劇の枠を超えることを目指します。小劇場演劇は観客との距離が近く、観客に新しい体験や考え方を提供します。予算は限られていることが多いですが、それが逆にクリエイティブな発想を生むきっかけとなります。

 

市民劇団

市民劇団は地域社会の人々が集まって制作・公演する演劇で、地域社会とのつながりを大切にします。市民劇団はプロフェッショナルな演劇団体とは異なり、地域の話題や問題を取り上げることが多いです。市民劇団は演劇を通じて地域社会を元気づけ、社会的な意識を高めることを目的としています。

 

高校演劇

高校演劇は高校生が制作・公演する演劇で、若者のエネルギーと創造力が溢れています。高校演劇は学校の教育プログラムの一部として行われ、学生たちはチームワークやコミュニケーションスキルを学びます。高校演劇は観客に新鮮でエネルギッシュな演劇体験を提供し、若者の視点を表現します。

 

児童演劇

児童演劇は子供たちが主役となり、自分たちの世界を表現する演劇です。児童演劇は子供たちの創造力や表現力を育む場となり、子供たちは演劇を通じて自信や協力の精神を学びます。児童演劇は観客に子供たちの純粋で新鮮な視点を提供し、観客を笑顔にします。

 

まとめ

以上のように、演劇には様々なジャンルや分類があります。それぞれの演劇は観客に異なる体験や感動を提供し、演劇の豊かな世界を表現しています。演劇を通じて、さまざまな物語や演出手法、そして日本特有の演劇文化を楽しむことができます。演劇は人間の感情や社会の問題を表現する貴重なアートフォームであり、多くの人々に愛され続けています。