アリストテレスは言いました「劇形式こそが最高の文学形式だ」と。舞台演劇の歴史は非常に古く、古代から人々を惹きつけてきました。演劇の何に魅力を感じるかは、人それぞれあるでしょうが、根本的な魅力というものは、恐らく古今通じて変わっていないでしょう。
私が初めて演劇を観たのは中学生の時ですが、本当に演劇の魅力に気が付いたのは大人になって友達の付き合いで観劇をした時。当時、精神的に参っていたこともあったのか、雷に打たれたような衝撃を受けました。
ここではそんな私の経験に基づく個人の価値観と、古代より演劇に見出されている不変的な価値、そして改めて「演劇の魅力って何だろう?」と向き合い、色々な人から聞いた意見を総合的に判断して、導き出した「演劇の魅力」について解説していきたいと思います。
映像が主流になってからは、演劇といえば比較的高い年齢層の人の趣味というイメージが定着していました。しかし昨今は漫画やアニメ、ゲームを原作とする「2.5次元」の舞台がさかんに公演されるようになり、その傾向もなくなりつつあります。
キャラクターや世界観の再現性が高いことで話題を呼び、出演俳優がアイドル的な人気を持つようになったり、グッズが爆売れしたりと、舞台演劇に熱中する若者が増えているのです。ひと昔前では考えられないことでした。つまり幅広い年齢層に愛されているのが演劇の魅力といえます。
映画、ドラマ、アニメ、ゲーム、インターネット・・・技術の発達した現代では娯楽は溢れるほどあります。しかし、舞台鑑賞は画面内にパッケージ化されていない・・・つまりナマモノであるという点で、他の娯楽と決定的に違います。
画面越しではない役者の息遣いを感じながら、彼ら・彼女らが怒ったり、笑ったり、悲しんだりしているのを間近で見ていると、まるでアトラクションに乗っているかのような感覚に浸れるのです。
確かに映像と違いド迫力のVFX、アクションなどはありませんが、舞台装置による演出や、演技力がもたらす想像力を糧に、映画のスクリーンとはまた違う臨場感、大感動を味わえるのです。そうして一時的にでも日常を忘れることができるのが、演劇の大きな魅力の一つですよね。
演劇において観客は目撃者でもあります。日常では体験できないようなことが、目の前でリアルタイムに起こっている訳ですので、役者達と一緒に冒険しているような気持ちになり、舞台と観客との一体感を味わえます。
また映画館と違い、舞台だと笑い声を始めとした声だしが基本OKですから(勿論程度問題はありますが)、観客同士でも一体感が生まれるのも個人的には大好きなんですよね。
演劇では、観客の反応が演者にも伝わり、演者のパフォーマンスに影響を与えます。この相乗効果が生の舞台独特の盛り上がりを生み出しているんです。
ライブパフォーマンスも同じような性格を持っています。ライブでの一体感だったり高揚感は、CDでは得られない、ライブでしか味わえないものとよく言われますよね。歌い手が歌ったり場を盛り上げて、それに反応してくれるファンがいる。それで歌い手の気分も上がり、パフォーマンスにプラスの効果を与える。
それと同じで、演者と観客、お互いが主役であり、一緒に作品を創り上げていくような一体感を味わえるのは、映画やドラマにはない演劇の特権といえると思います。
舞台は一期一会です。ナマモノだから、1回1回変化があるからです。お客さんの反応を見て、内容を変えるなんてことは日常茶飯事。
受けが悪かったところをカットしたり、アドリブで入れた台詞がたまたま受けたから、台本の台詞として正式採用したりすることもあります。台詞、動作、表情全てに変化があるので、全く同じ公演などありえません。
その為、通な人は同じ舞台を何度も見ることが珍しくないのです。
生身の場を共有出来るという性質上、人と人を結びつけてくれるというのも演劇の魅力の一つといえます。
観客としては好きな舞台役者ができると、その役者を生で見た時の感動が味わえます。素晴らしい舞台は観ている人の心に影響を与え、舞台上に知り合いや友人がいれば、感化されて自分も頑張ろうという気持ちにもなれるでしょう。
演者としては、演劇には様々な分野の人が関わる為、稽古期間中や公演期間中を通して、全く畑違いの人の人生や価値観に触れることが出来、新たな視点、素晴らしい刺激を貰えるのことでしょう。
演劇は人との出会いの場になっているのです。
各分野のエキスパートが集結して作り上げる芸術作品・・・それが演劇です。
裏方をやっていると、照明や舞台美術、音楽などにもついつい目がいき、肝心の物語に集中できないなど日常茶飯事(笑)
ここでは観客と演者の視点から演劇の魅力を紹介してきましたが、演劇の楽しみ方は本当に多岐にわたります。
その人の立場、辿ってきた人生や価値観によって、舞台上に見える世界(魅力)も変わってくる・・・これもまた演劇の魅力といえるでしょう。
今まで魅力として挙げてきたナマモノ感は諸刃の剣であり、これがそもそも苦手という人も少なくありません。
いきなり舞台に足を運ぶのは気が引ける場合、まずは動画で見てみるのもいいでしょう。案外悪くないかも・・・?という所から、生で見てみたい!となるまでそう時間はかからないと思います。
是非、一度観劇してみて、演劇にしかないワクワク感、緊張感を味わってみてください。そうしてあなただけの演劇の魅力を見つけることが出来れば、あっという間にこの世界の虜になると思いますよ!